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『千と千尋の神隱し』で2002年カンヌ映畵祭金熊賞を受賞し、2003年には、アカデミ一賞長編アニメ一ション賞にも輝いた宮崎駿は、今や日本を代表する映畵作家として知られるようになった。1941年に生まれた宮崎は、大學卒業後、東映動畵に入社、以後、卓越したアニメ一タ一としての評價を得て、映畵製作の道に進んでいく。
宮崎の作品には、所謂「戰後民主主義」と呼ばれる思想の影響が色濃く見える。戰後民主主義の定義は簡單ではないが、大まかに言えば、主權在民ㆍ平和主義ㆍ基本的 人權の尊重という、日本國憲法の考え方を基礎にした思想である。學生時代からマルクス主義に傾倒していた宮崎は、自分の作品にも社會主義的な要素をあちこちに盛り込んでいる。また、本人自身も、自分が社會主義者であることを極めて肯定的に語っている。東映時代にアニメ一タ一として參加した『太陽の王子ホルス』をはじめ、自身が監督した『未來少年コナン』や『風の谷のナウシカ』という作品には、社會主義的な主張がふんだんに盛り込まれ、それが作品の完成度を高めるのに大いに役立っている。
しかし、冷戰の終結とともに、政治思想の役割が低下し、宮崎は新たなテ一マの模索を始める。その過程で見出されたのが、女性の自立という問題である。男女同權という戰後民主主義の主張を反映して、宮崎の作品には、男性以上の活躍をする女性の姿が描かれている。しかし、その一方で、男性に付き從う古典的な漫畵の女性がそこに同居しているという批判も受けていた。そうした中で作られた『魔女の宅急便』は、普通の少女が自分の職業を求めて努力を續けるという、新たな可能性を示した作品となった。そして、このテ一マは、以後の宮崎作品にも受け繼がれていく。