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「生れ出づる悩み」の語り手「私」は木本青年の生活を描くに当たって、「私の鈍い頭にも同感といふものゝ力 がどの位働き得るかを私は自分で試して見たいのだ」と、創作の方法と目的について言明している。語り手の意図した 「同感」とは他者の実感に迫る想像力と解釈できるが、作者を強く喚起させるメタフィックションの形式をとって、「同 感」を創作の方法として打出した有島の意図はどこにあるのか。 その際、手がかりとなるのは、「人類の意志に取り組む」という白樺派を強く喚起させる言説である。従来も白樺派 と比較しての論はあったが、印象主義的な指摘に終わるきらいがあった。本稿では<天才主義的芸術家観>、芸術 家と労働の問題、「人類の意志」への志向という共通の素材の取り込み方の比較を通して、具体的な検証を行った。 <天才主義的芸術家観>と労働の問題を見れば、天才への志向は武者小路や長与の描く人物にも見いだせる が、有島と武者小路の描く登場人物は天才の芸術への強迫観念めいた志向があり、その背後には人類労働者に 対する負い目が潜んでおり、負い目は才能によって解消すると思っている点で共通している。しかし両者の「人類の意 志」への志向の在り方には懸隔が目立つ。武者小路は自己に内在する人類の意志を自分の実感に拠って表現しよ うとするのに対して、有島は周囲の魂たちの声、しかも自ら訴えることの出来ない「亡霊のやうな魂」の声を、それに感 応した自分の魂を通じて表現しようとする。他者の形象化であるから「同感」する想像力が必要であり、その成功は 他者と自分の一致を意味し、そこに人類の意志の発見が期待されるわけである。つまり、有島は「人類の意志」にか なった芸術を目指すということについては武者小路等と共感していたが、それを捉える方法として他者の実感の代辯を 意味する「同感」を打ち出し、自分の独自性を明らかにしたのである。「同感」を打ち出した意図は、『白樺』の人 道主義の傾向の中で自分の独自性をはっきりさせることにあった、ということになる。
목차
1. 序論
2. <天才主義的芸術家観>、芸術家と労働の問題という素材の比較
2-1. 「生れ出づる悩み」の登場人物の芸術家観と労働との問題
2-2. 武者小路実篤「或る脚本家」の登場人物の芸術家観と労働の問題
2-3. 長与喜郎「曇れる日」の登場人物の芸術家観と労働との問題
3. 「人類の意志」と「同感」の結び付きの独自性について
3-1. 武者小路実篤における「人類の意志」と<実感>
3-2. 「生れ出づる悩み」における「人類の意志」と「同感」の結び付き
4. 「同感」「同情」重視の背景
5. 結論
参考文献
