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紫上は『源氏物語』の女主人公であるという華やかさの裏に、<親>、<子>、<夫>という普遍的なことにおいて、最も深い苦悩を抱えた人である。本稿では、その紫上の表面的な華やかさと、誰からも顧られることのなかった深い内面的苦悩という矛盾した両面に注目し、その関わりを解明しようとした。そしてここで浮彫りにされたのは、外的な美の裏に潜む内的苦悩の構造と、その超越・昇華・克服による真の人間的美の完成という紫上像の人物造形である。紫上は、物語の中においても、そして後の読者・評者によっても、最も美しい人とされながら同時に、誰よりも可愛そうな人としても認識されている。紫上は、いわば苦悩による美人なのである。もっと正確に言えば、苦悩あってこその美人、苦悩の昇華を通じて総合的に結実した人間的美人、が紫上なのである。紫上はもともと外面的美貌を備えた人として登場するが、やがて<継母のいる親>、<実子でない子>、<信頼しきれない夫>という人生の暗い構造の中に否応なく組み込まれながら、切実に<孤独>を知り苦悩するようになる。<親>、<子>、<夫>等から生じる、いわば人間的苦悩の典型がここにあるわけである。が、紫上はその苦悩によって崩れ落ちることなく、かえってそれを実に人間的な仕方で超越・昇華・克服することで真の人間的美を完成させていく。具体的に言うと、その苦悩は、<おおらかな態度>、<子孫への純粋な慈愛>、そして<徹底的に思いやる愛の真髄>を貫き通すことによって、ようやく<超越><昇華><克服>されていくのである。そうすることで紫上は、現世の最も美しい理想的な人間として皆の心に刻まれるようになるのである。つまり内的苦悩を乗り越える過程を通して、外的美の世界が熟し繰り広げられるという、普遍的でなおかつ深奥な人生論的メッセージがここにあるのである。そしてここに、美の完成者としての紫上の人物像の意味があると言える。
