초록
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倭名類聚抄(以下、倭名抄)は、各見出しの下に、各種の書籍から漢文注記を引用している。項目によっ ては漢文注記の下に、音注や和名を記入しているものもある。その引用の中には、本草学関係書からの引用が 多く見られる。これについて、河野(1983)は、倭名抄の「本草」は、新修本草を指すものであり、その出典 が「本草云」「陶隠居本草注云」「蘇敬本草注云」と明記されたものは、本草和名からの「孫引き」であると された。本稿は、この河野(1983)の「孫引き」説に疑問を抱き、倭名抄において、「本草」「陶隠居」 「蘇敬」を出典とする漢文本文について、本草和名の本文と、新修本草の本文とを比較し、その拠り所を明確 にすることによって、倭名抄における本草和名の位置を確認したいと思う。これは、いわゆる「孫引き説」の再 検討であると同時に、日本最古の百科事典である倭名抄の成立事情の断面を窺う手がかりになるものである。 考察結果、倭名抄において「本草云」として引用されたものの中には、河野(1983)の指摘とは異って陶隠 居注や蘇敬注を記入したものも257例の中、31例見られる。また、引用の内容には、巻による相違が見られ、巻 四と巻七には新修本草を直接引用したと考えられる用例が多く、巻八には新修本草にはなく、本草和名にだけ 存する文の引用が目立つ。 考察対象用例363例の中、本草和名からの孫引きの形の引用を想定できるのは257例である。この中、確実 に新修本草から直接引用したと考えられるものも57例あり、新修本草や本草和名のどちらにも載っていないものも 11例ある。これに、その他の3例を合わせると71例になる。これは本草和名とは関係を持たないものである。57 例は新修本草を直接参照したことを示すものであり、後者の14例(11+3)は、ほかの本草書の介在を想定させ るものである。従って、河野(1983)のいわゆる「孫引き」説は成立しないことが本稿の考察をとおして証明され た。
목차
1. 問題の提起
2. 中国の本草書概略と本草和名
3. 先行研究の検討
1) 築島裕(1965)
2) 河野敏広(1983)
3) 宮沢俊雅(1998B)
4. 「本草」「陶隠居」「蘇敬」を出典とする用例の考察
1) 本草和名にはなく、新修本草にだけあるもの:57例
2) 新修本草にはなく、本草和名にだけあるもの:35例
3) 新修本草ㆍ本草和名の両方に存するもの:257例
4) 新修本草にも本草和名にもないもの:11例
5) その他:3例
5. 倭名類聚抄と本草和名
1) 「本草」として引用された漢文本文の内容について
2) 巻による偏り
3) いわゆる「孫引き説」について
6. まとめ
参考文献
