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초록
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本論文は村上春樹の「書く」姿勢の変化に関する考察である。春樹は1995年3月に起きた地下鉄サリン事件を起点にして自分の書く姿勢を変えた。詳しく言うと、その以前には社会的な問題に対するデタッチメントな姿勢を見せていたが、それ以降にはコミットメントな姿勢を見せ始める。このような変化は春樹自身が意図的に追求したもので、彼の作品に反映されていることを確認できる。本論文では、そのような事実を実証的な考察を通してまとめておくことで、春樹作品世界の一端を理解しようと試みた。 その結果、春樹自身が意図的に書く姿勢の変化を追求したという証拠を、本論文の第一章で明らかにし、まとめることができた。また、その変化を自身の作品に反映させ、新しい主人公のキャラクターの造形を試みたという事実を、第二章、第三章で明らかにすることができた。『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』『ダンス・ダンス・ダンス』などのように『アンダーグラウンド』以前の作品では、主人公「僕」が現実との関係をできるだけ希薄にしながら生きていこうとする人物に造形されているのに比べて、『アンダーグラウンド』を始め、その以降の作品『スプートニクの恋人』『神の子どもたちはみな踊る』『海辺のカフカ』では主人公が現実との関係を大切にする人物として造形されていることが確認できた。そして、このような変化は、70年代に被った傷と、その傷によって抱くようになった社会に対する不信感を完全に払拭させるまではできなかったものの、地下鉄サリン事件のような社会現象が平気で起きている現在、自分の大多数の読者の親ぐらいの年齢になったものとして、若い読者たちに現実を認めさせ、そこで積極的に生きていかなければならないという社会的なメッセージを提供したいと春樹が意識しはじめたからだと判断する。