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虎明本狂言集では、名乗りの場面で推量・意志の助動詞「ウ」とともに「ウと存ずる」が多く用いられている。本稿では、虎明本で用いられる推量・意志の助動詞「ウ」と、「と思う」のついた「ウと思う」との間にどのような意味的、機能的相違があるのかについて考察する。 意味的な面からみると、「ウと思う」は「ウ」よりせまい外延をもつ。 (1)「ウと思う」は「ウ」と同じく推量・意志の意味に使われる。 (2)「ウと思う」は「ウ」とは異なり、勧誘の意味をもつことはできない。 (3)「ウと思う」は独り言に使われない。必ず聞き手を意識する場面で使われる。狂言台本の名乗りや独白に 「ウと思う」が使われるのは、観客を公然に意識する狂言の特徴によるものである。観客を聞き手としながら 「ウと思う」を用いるため、名乗りや独白の「ウと思う」は常に「ウと存ずる」の形をとる。 「ウと思う」は、機能的な面では「ウ」を補っている。 (4)「ウ」は不変化助動詞で、活用形や時制などををもつことができない。これを「ウと思う」が補う。 (5) 虎明本のホドニ、ニヨッテなどの接続形式と関連して、「ウ」はニヨッテ句の述部にくることができないという制約があるが、「ウと思う」はこのような制約がない。また、「ウ」はニヨッテ句の帰結句にくることが難しいという制約があるが、「ウと思う」にはそのような制約がない。
목차
要旨
1. はじめに
2. 先行研究
2.1. 村上
2.2. モダリティ化した「と思う」と引用動詞の「と思う」
3. 虎明本の「ウ」と「ウと思う」の比較
3.1. 「ウ」と「ウと思う」との意味的違い
3.2. 虎明本の「ウ」と「ウと思う」との機能的差
4. 因果形式との関係からみる「ウ」と「ウと思う」
4.1. 「ウと思う」の一体化と分離の条件:条件句のかかり先
4.2. 虎明本のホドニとニヨッテとの関係
5. まとめ:虎明本における「ウと思う」の意味と機能
参考文献
1. はじめに
2. 先行研究
2.1. 村上
2.2. モダリティ化した「と思う」と引用動詞の「と思う」
3. 虎明本の「ウ」と「ウと思う」の比較
3.1. 「ウ」と「ウと思う」との意味的違い
3.2. 虎明本の「ウ」と「ウと思う」との機能的差
4. 因果形式との関係からみる「ウ」と「ウと思う」
4.1. 「ウと思う」の一体化と分離の条件:条件句のかかり先
4.2. 虎明本のホドニとニヨッテとの関係
5. まとめ:虎明本における「ウと思う」の意味と機能
参考文献
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