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초록
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「『死』を畏れぬ男」は今までほとんど研究の対象となっていない作品である。主人公の一人語りでストーリーが展開されるという風変わりな形式で書かれたこの作品は、目新しさはあるが、主人公の男の饒舌と皮肉な言い回しだけが目立つのみでその真意がわかりにくい。単なる風刺、嫌味に終わってしまっている感じがする。 しかし、作品の最後で「あの「死」をも畏れない勇敢な男はその時戦場に向かつて驀直に駆けさせてゐたのだ」と記述がなされており、何かを暗示するような終りかたになっている。果たしてこれは何を意味しているのだろうか。普通の読みではその意味が理解されてこない。そこで本稿ではこの作品を有島の社会批判が暗示されていると見て、作品の再検討を行うことにした。 有島は「一番嫌ひな男の典型を丸彫りにし」、その男に「うんと皮肉をあびせて」やるために、主人公を造形した。表面上では、ただ単に風刺・嫌味を言って終わっているようであるが、実際はそうではない。有島は主人公の相場師を成金に見立てて語っているのである。そして、その饒舌を通して社会批判を行っていった。有島がこの男を戦争景気で生まれた成金として表現したとすれば、この作品の最後の「あの「死」をも畏れない勇敢な男は・・・」は、この成金が「戦場に向かつて驀直に駆けさせていた」という意味になる。成金は天皇制権力者と結託して戦争を金儲けの機会とした者であり、彼らが日本という国あるいは国民を「戦場に向かつて驀直に駆けさせて」いる、と読むことができる。有島はこの作品で「正直な勇敢な男」を表現したのではない。「勇敢な男」ではなく「人の死を敬い尊ぶ心を持たない、そうした価値を知らない男」を描き、その男が国・国民を戦争に向わせていると暗に警告しているのである。 有島は直接的な言説で批判をする勇気を持ち合わせず、皮肉を言うことで間接的に社会批判を試みたと見ることができる。「大逆事件」以降、言論の統制が厳しくなっ社会状況にあって、これが有島の精一杯の自己主張であった。
목차
1. はじめに
2. 人物造形の意図
2.1 「人間の生活に正しい関係を造ることのできない憫れむべき男」
2.2 「死を怖れぬ男」を「死を畏れぬ男」と改題した理由
3. 「耳たぶをこきおろす」行為、その象徴的意味
4. 占い師の記述と政府批判
5. 日本の帝国主義への批判
6. 隠された主張
7. おわりに
参考文献