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本稿は防貧機能を持つ国民年金と救貧機能を備える基礎年金とのある べき改革方向を提示することを目的としている。拠出制度の国民年金が老 後の安定的で持続可能な所得保障制度として機能するためには、事故に備 えた保険制度としての防貧機能に特化すべきである。租税方式ではない保 険料方式の国民年金制度としては当然ともいえる。ところが、国民年金制 度を取り巻く様々な誤解や無責任な避難によって制度に対する不信が高ま り、保険制度としての防貧機能より民間の貯蓄性保険商品のように扱われ ている。国民の自助努力をもとに設計された国民年金制度であれ、公的年 金制度の持つ世代関連帯が大きく揺らぐようになれば、保険料方式ではな く租税方式の基礎年制度も大きな変革を余儀なくされる。つまり、国民年 金が防貧機能を強く持てば持つほど、救貧機能を持つ基礎年金は国民年金 の成熟するまでを部分的に埋める経過的な老人貧困救済の役割を担うよう になり、対象や給付水準も国民年金のそれと密接な関連性を持たざるを得 なくなる。こうした観点から本稿は事前に誠実に保険料を納めてきた国民 とそうでない国民を選別し、ニーズに比例した給付を保障するや役割を強 化するためには、国民年金の防貧機能の最大化こそ救貧機能の極大化であ ることを明らかにし、国民年金と基礎年金との望ましい関係を模索する。