초록 열기/닫기 버튼

本論は沖縄県八重山小浜島の事例を中心とした民俗空間における女性原理の解明のために作成されたものである。沖縄学の重要なインデックスとして取り扱われてきた、日常の男性優位に対する非日常の女性優位という二重構造は沖縄民俗社会の特徴として指摘されてきた。1950年代馬淵東一が<沖縄全般を通して最も広く見出される範型は、家族レベルにおいて、儀礼生活では姉妹が、世俗的生活では兄弟が主導権を有する>といった「兄弟に対する姉妹の霊位的優越」論は「をなり神信仰」を基盤に様々な議論を呼び起こしてきた。以降、女性と関連した多様な研究は親族・家族論、民俗宗教、世界観、社会構造論などそれぞれのテーマと結び付き多様な研究が蓄積されてきた。とりわけ村落共同体の世界観解明の際に象徴的二元論という理論的な枠組みのもと女性原理と男性原理を紐解いてきた結果、当該社会の社会的・象徴的秩序(socio-symbolic order)への描写的記述を与えることに成功してきた。また、女性の親族集団、祭儀集団への帰属原理をめぐって、その両属的あるいは選択的帰属の実態が浮彫りになり、沖縄社会の家族・親族論に欧米発の人類学的理論の実験場(?)ともいうべき議論が噴出し、日本における社会・文化人類学会に大きく貢献してきた。 一方、本論で取り上げた八重山小浜島の事例は従来の女性原理に何らかの形で男性原理が関与し今までの議論に新たな視点をもとめる事例である。例えば、「ツカサ」という神女の継承をめぐって父系の家筋が大きく関与し、母─娘とう母系原理による継承が様々な形で錯綜している。つまり、母─娘という母系原理と原理的に矛盾する妻─嫁あるいは母─息子の妻というふうに父系の家筋に帰結させようとする求心力が作用している。 また、この事例から読み取れる男性原理の女性原理への関与は、民俗空間における祭儀の場面でも見出される。上述したとおり祭儀場面での女性優位は沖縄全域にわたる例に漏れず小浜島でも認められる。例えば、「ツカサ」と呼ばれる女性司祭者は祭儀集団の最高位神職者として霊的・儀礼的地位を有し、「ワン」という聖域空間の「イビ」空間は男性禁制の女性だけの排他的空間として位置づけられる。しかし、祭儀遂行の手続きを細部まで覗いてみると祭儀開始の段階で男性原理が深く関わっていることがわかる。これは女性原理が排他的に働くのではなく男性原理の関与を促し、あるいは受け入れ祭儀における「全的構造」を完成している。本稿が民俗空間における女性原理への新たな解釈を施しえたとするならば、それは以上のような民俗社会の男女性別構造におけるきめ細かな参与観察の結果であると思われる。