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『仮名手本忠臣蔵』の中で今は省略されがちな本蔵一家に焦点を当てて喜多川月麿画にて文化六年に刊行された〈忠臣蔵もの〉合巻が『加古川本蔵建立』である。浄瑠璃・歌舞伎を草双紙化するに当たって行った作者十返舎一九の創作法を分析すると、原話の大筋の中で展開しつつ、絵柄は類似性が見られ、話柄のみ改変・脚色甚だしい場合(Ⅱ-1)と、話柄は勿論、絵柄まで改変される場合(Ⅱ-2)と大別して考えられる。前者の場合は絵面のみ眺めると、なんの変哲もない芝居のワンシーンであるが、本文・書入に目を通す瞬間、この絵柄の意味はがらっと変わる。本作執筆において、原話から作者が選んだ素材は、本蔵一家に関わる局面であるが、後者の場合、パロディーと言い難い程、原型をあまり留めないところもある。しかしながら改変・転用の一環と言えるのは、事件を起こす目的と結末、人間関係が同様であるからである。言い換えると前者の場合、絵柄は原作に基づく演劇舞台に忠実に従いながら、話柄のみ改変する場合であり、後者は絵柄と話柄、共に改変することで笑わせる場合である。しかし、絵柄と話柄共に改変する場面は、改変甚だしくても原作の面影を残しつつ捩る創作方法を取っていたならば、一方、原話と似通う点がなく、作者の創案・発案が発揮される局面(Ⅲ)もある。忠臣蔵にない場が設けられることで、原話にとらわれず自由に忠臣蔵の人物達を遊ばせる。作者が重点を置いて描きたかった人物が本蔵であったが故に、彼と関係ない場面を省き、彼と関わり合う原話の二・三・八・九段目を拡大しつつ捩りながら、三十頁に渡る話を展開する為に、一方では原話の枠から離れつつ変容の可能性を探ったのである。