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南北朝から江戸初期にかけて製作されたお伽草子は現在、約300~500編に達しており、これらの多くは華やかな挿絵を施した奈良絵本や絵巻の形で作られ、享受されてきた。ところで印刷技術と貨幣経済の発達によって文学作品の大量生産が可能になった江戸期に入ると、お伽草子は多様な版本で刊行されて人々の人気を集めるようになる。なかでも享保期(1716~1735)、大阪の書肆である渋川清石衛門が出版した渋川版ꡔ御伽草子ꡕは数多くのお伽草子のなかから特に23編だけを選んで叢書の形として出版し、商業的な成功をおさめるようになる。 さて、渋川版ꡔ御伽草子ꡕ23編をその内容からみると、恋愛譚(14編)、親孝行譚(4編)、祝儀譚(2編)、その他の教訓譚(3編)となっており、男女の恋愛と結婚を扱った恋愛譚がこの叢書の半分以上を占めていることが分かる。したがって本稿ではこの恋愛譚に着目し、渋川版ꡔ御伽草子ꡕの性格および商品性へ繋がる魅力の要素について考察してみた。 では果たして当時、花嫁さんの嫁入り道具として人気を集めた渋川版ꡔ御伽草子ꡕの魅力の要素とはどんなものであろう。たぶんこれらの疑問を解く手掛かりはいわゆる恋愛譚に込められたメッセージ―完全な幸福に繋がる恋愛及び結婚への賛美―から得られると思われる。つまり渋川版ꡔ御伽草子ꡕの恋愛譚は中古時代の色好みとは違って、一夫一妻制を掲げて浪漫的な悲恋より安定した結婚のほうを理想とする考え方が目立つ。言い換えれば恋愛譚では夫婦の堅い絆こそ男女関係の最も崇高な美徳であると説かれていると同時に男女の役割ないしその位相が一定のパタンーを示している。たとえば男性は自分の能力と積極的な行動によって「めでたい結婚」として象徴される成功を手にいれた選択者․出世者として、また女性は男性の成功を支えるため従順に従い、犠牲する被選択者․献身者として描かれている。このような恋愛譚の趣向は渋川版ꡔ御伽草子ꡕが出版された当時、社会に根をおろしつつあった儒教の道徳倫理にかなうものであり、実力本位の立身出世と現世利益を求めてやまなかった人々の希望と情緒にあうものであったと見られる。 要するに当時、渋川版ꡔ御伽草子ꡕの人気はその優れた文学性によるものであるというより、だれもが親しみを感じるべき素材とやさしい文体、そして人々の擬古的な趣向によるところが大きかったと思われる。つまり、物語の構成においては前代のそれに従いながら、内容においては新しい時代の価値観及び考え方を反映している点こそ、渋川版ꡔ御伽草子ꡕの商品的な成功へ繋がる魅力であるといえるであろう。