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本稿は、明治時代以前の「旅行」という語の意味の変遷について、語誌的観点から明らかにしたものである。 先行研究によると、「旅行」は、明治時代以降に、交通機関の発達や宿泊施設の充実といった近代文明の恩恵を受け、広く一般に普及した語である。そこで本稿では、明治時代以前の「旅行」の様相を探るため、「旅行」の典拠と上代から近世までの「旅行」の来歴を明らかにした。また、近代文明との関わりを探るため、西洋文明の流入が始まった江戸時代末期の「旅行」の様相についても明らかにした。 「旅行」は中国の漢文が典拠であり、日本での音読みされた用例は平安末期の『江談 抄』が初出である。中世、近世を通して「旅行」は、≪旅≫≪旅に行く≫という意味であった。また、武士や貴族、僧侶といった支配․教養層が主に使用する位相語であり、文書語であった。特に、江戸時代を通して、幕府の公的な記録や武士の残した文献に「旅行」が多く使用されていた。江戸時代末期には、西洋文明との関わりにより、西洋人の行う移動や日本人が西洋に赴くことを扱った文献、対訳辞書、翻訳書に用例が多く散見されるようになる。江戸時代末期においても、「旅行」は、武士階級が主に使用した位相語であり、文書語であったが、「旅行」が持つ≪旅≫≪旅に行く≫という明示的意味(denotation)に加え、≪新進的なもの≫という副次的意味(connotation)が付加された。江戸時代末期に、西洋文明による新たな副次的意味が付加されたことは、その後の明治時代における「旅行」の日常語化への伏線となっていくのである。


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